12002 日本国憲法

課題1.明治憲法の基本的性格と日本国憲法の基本原理について説明しなさい。

 憲法とは、本来、国家の根本法のことをいう。国家はその組織や構造などの基本的な事項を定めた法の存在を前提として存在しており、このような意味ではどの様な国家にも憲法は存在すると言える。これに対して近代では、国家の根本法の内容として、ある程度の基本的人権の保障、権力分立制度、国民参政制度が盛り込まれた憲法が現れており、このような憲法を近代的な意味での憲法という。

 日本には、近代的な意味での憲法が二つ存在する。一つが明治憲法(大日本帝国憲法)であり、もう一つが現在の日本国憲法である。この二つはその性格が大きく異なっている。

(1)明治憲法の基本的性格

 明治憲法は近代的な立憲主義と封建的な絶対主義的天皇制(神権主義的天皇制)との妥協の産物として生まれたものであるため、その性格として民主的(立憲主義的)な面と半民主的な面の2面を有していた。

 民主的な面は以下のとおりである。

@議会を設置した。帝国議会は皇族・華族・勅任の議員で構成される貴族院と民選議員で構成される衆議院からなる

A天皇の国務上の行動をコントロールするために、国務大臣の「補弼」制度を設けた(補弼とは助言のこと)。

B司法権の独立を認めた。

C臣民の権利を保障する規定を設けた。

また、反民主的な面は以下のとおりである。

@天皇は神聖不可侵であり、主権者であり、かつ統治権の総攬者として三権(司法、行政、立法)を集握していた。

A帝国議会は天皇の統治権行使を助ける「協賛機関」にすぎず、行政府は「天皇の使用人」であり、裁判所は「天皇の名において」その作用を行うこととなり、三権分立は形だけのものであった。

B天皇が広汎な大権を有していた。大権作用とは天皇が他の国家機関の参与を要することなしに、自ら行う作用を指し、緊急勅令大権、独立命令大権、官制大権、任命大権、統帥大権などがある。

C天皇に軍の統帥権があった。その結果、行政は政府と軍部の二元的存在となった。

D「臣民の権利」の保障規定を設けてはいたが、人間としての生来的に有する権利(すなわち基本的人権)としての性格を有するものではなく、天皇が臣民に対して恩恵的に与えた権利にすぎなかった。

E権利の保障に際しては、「法律の留保」(法律によりさえすれば、権利を制限することが可能となる)を付していた。

(2)日本国憲法の基本原理

 日本国憲法の基本原理は、国民主権主義、平和主義、基本的人権尊重主義の三つである。

@国民主権主義

 国民主権主義とは、国家の意思を最終的に決定する力が国民にあるということを意味する。明治憲法では、天皇に意志決定権がある天皇主権主義であった。

 日本は代表民主制(間接民主制)を採用しているため、国民の主権の作用は、主に選挙権の行使を通じて行われる。

A平和主義

 日本国憲法は前文第2項において、平和主義の立場に立つものであることを明らかにしている。いかなる平和主義を採るかについては第9条「戦争の放棄」の規定するところである。

 第9条については様々なの解釈による論争がなされているが、代表的な考え方においては、自衛戦争を含む一切の戦争及び一切の戦力の不保持を定めていると考えられている。

B基本的人権尊重主義

 日本国憲法は、個人の尊厳を価値体系の原点におくことによって、自然権たる性質を有するところの基本的人権を保障している。

 基本的人権とは、人間が人間らしく生きていく上において基本的に必要な諸種の権利の汎称である。日本国憲法が保障する基本的人権は、法の下の平等、自由権(精神的自由、人身の自由、経済的自由)、社会権及び参政権などのその他の権利に分類できる。

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